恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~

紫苑さんが事前に施した仕掛けに、まんまとハマッてしまったってことだ。


女のコなら誰でも憧れる相合い傘♪


けど、それだって相手しだいだ。

夢にまで見た相合い傘も、相手がおにーちゃんではムードのかけらもありゃしない。


ガタイのいいおにーちゃんと一緒だと、女物の小さい傘に入っているせいもあって、お互いのカラダが押し出し合うようなカタチになってしまって、カラダの半分……いや、70%以上が雨にズブ濡れになってしまう。

紫苑さんにしてみれば、小さい女物の傘を使って相合い傘をすることで互いの距離が縮まるという粋なはからいをしたつもりなんだろうけど……、

「もっとソッチ行ってよっ」

「お前こそ、そんなに入ってくんなよっ」

「もォ、ヘンなとこ触んないでよっ」

「不可抗力だ、ってんだっ」

……なんて言い合って、互いになんとか傘の中に入ろうとしているあたり、なんか“自分さえ良ければ”みたいな人間のあさましさを見たような気持ちにさえなってしまう。



< 243 / 263 >

この作品をシェア

pagetop