恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
わざと陽気に振舞うおにーちゃんが痛々しくて、あたしにはかける言葉のひとつさえ浮かばなかった。
「まっ、短けぇあいだとはいえ、みんなのアイドル・仲見世小町と結婚する夢を見させてもらったんだ♪ いい夢見させてもらったよ♪ なぁ、ピンク、お前と同じだ♪」
たしかに、大金持ちの紫苑さんの玉の腰に乗る夢を見たあたしとおにーちゃんは、似たもの同士なのかもしれないと思う。
「………」
「オイ、なんで黙ってんだよ。いつもみたいに“自分ひとりだけ幸せになろうとするからバチが当たったんだよ♪”とか言いながらオレのこと指さして、ケラケラ笑ったらどうなんだ?」
「……そんなこと言えるわけないじゃん……もとはといえば……婚約解消の原因を作ったのはあたしなんだから……」
「気にすんな、って♪ 縁がなかった、ってことなんだろーよ♪」
おにーちゃんが陽気に振舞えば振舞うほど、そのカラ元気が、さらにあたしをたまらない気持ちにさせる。
「でも……」
そう言ったきりクチを閉ざすあたし。