恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~

そんなあたしの態度に、さすがにおにーちゃんの明るさも色あせていく。



ザァーッ……



昼過ぎに降りはじめた激しい雨は、夜になっても雨足の弱まる気配はいっこうにない。


「クシュンッ!」


夏まっ盛りとはいえ、降りしきる夜の雨は徐々に……でも確実にあたしの体温を奪いはじめていたみたい。

「なんか悪かったな……せっかく迎えに来てもらったのに、そんなビショ濡れにしちまってよ……」

おにーちゃんが珍しくしおらしいことを言うもんだから、グスンと鼻をこすりながら、思わずおにーちゃんの顔を見るあたし。

……と、おにーちゃんの視線は、あたしの顔のほうには向けられていなかった。

シャッターの下りた酒屋さんの軒先に、並んで立って雨宿りをしていたおにーちゃんの視線。それはあたしの胸元に向けられていた。


「きゃっ、どこ見てんのよっ」


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