恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「うるさい。黙ってて」


おにーちゃんの言葉には耳を貸さずに、肩甲骨のあたりにあてがわせた彼の右手を、左胸のふくらみに沿うようにして、ゆっくりゆっくり下のほうへとずらしていくあたし。

その間、あたしの左胸にあてがわせたおにーちゃんの右手は小刻みに震えていて、その手が胸のふくらみのより高い部分へと近づけば近づくほど、彼の左胸の鼓動もまた正比例でますます激しくなっていった。


「ヤダ、そんなに手を震わせないで……チカラを全部抜いて、ラクにして」


「も、もうよせっ……」


「ダメ。あたしはもう子供じゃないって、ちゃんと分かってもらうんだから」


「分かったっ……もう分かったから、これ以上は無理すんなっ」


そう言って強引に、あたしの手を振りほどくおにーちゃん。

あとちょっとで、その右手があたしの左胸の一番高いところに到着するという、そのギリギリ寸前のところだった。



サァー……
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