恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
ここまで言ったとき、おにーちゃんがソレをさえぎって言った。

「分かってる、お前はもういっちょまえのオトナだ」

「じゃ、じゃあ……」

「あぁ。これからはもう後ろめたさなんか感じない。素直なキモチでなんの気がねもなくお前のことを好きになるよ」

「おにーちゃん!!」

うれしかった。

今までずっとあたしを子供扱いしてたおにーちゃんが、はじめてあたしを一人前に扱ってくれたのが、すっごくうれしかったんだ。


あたしがこの16年間で歩いてきた道のりは、先にこの世に生まれてきて、そして常に何歩も先を歩いてるおにーちゃんの後をずっと、ずうっと追いかけ続けるものだった。

でも、さっきのキスの瞬間、ふたりの距離の差は0.00ミリメートルになった。

今やっと、追いついたような気がするよ。

ようやく追いついて、並んだ気がする。

今この瞬間、あたしとおにーちゃんは同じ一本のスタートラインに並んだんだと思う。

スタートのピストルはならないけど、“せーのっ”の同じタイミングで、同じ方向に、これからは一緒に進んでいくよ。

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