恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「も、もしもし赤井氏……?」
恐る恐る言うあたしの声に……、
「なんだ、ピンク、まだ起きてたのか?」
……って懐かしい声がこたえてくれた。
おにーちゃんが教育実習を終えて、再び浅草の町からいなくなって以来だから、声を聞くのは約2年ぶりだ。
だけど、まちがいなくソレはおにーちゃんの声だった。
……ってか、あたしのことを「ピンク」と呼ぶニンゲンは、この地球上におにーちゃん以外に誰もいないんだから、電話の向こうにいるのはおにーちゃんに間違いない。
「あ、あのさ……今って大丈夫……? もしかして隣にカノジョがいるんじゃ……」
「幸か不幸か、今はひとりだ」
“ひとりって、カノジョとはもう別れたってコト? それとも今夜はたまたまいっしょにいないってだけのコト?”