恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
だけど、もしもあのときカノジョがいることを承知で、それでもおにーちゃんを好きでいたとしたら、今ごろ“やっぱり相墨くんのことを好きになればよかった……”って悩んでいたのかもしれないとも考えられる。
「結局のところ、ニンゲンってヤツはどんな選択肢を選んだところで“あのとき、こうしとけばよかった”って悩んじまうもんさ」
「………」
「ま、その当時(とき)は、それがイチバンいいと思って選んだわけだし、タイムマシンに乗って過去を変えに行くことができねぇ以上は、“やらずに後悔するよりも、やって後悔したほうがマシだ”と割り切って、未来のことを考えたほうがいい」
「未来の……コト?」
「だって、そーだろ? 過去と違って未来なら、これからいくらだって変えられる」
おにーちゃんの意見は実に前向きだった。
「うん……そーだね」
そのあともしばらく電話は続いた。
だけど、相墨くんにフラれたことについては結局話さなかった。