恋ジグザグ～“好き”と素直に言えなくて～

バッグに着替えを詰め込んだあたしは母に話して自宅を後にした。

フツー、年頃の娘が男のヒトのところにお泊まりに行くなんて言ったら、どこの親だって猛反対するに決まってるけど、相手がおにーちゃんなら問題ナッシング。

あたしだって、おにーちゃんのところだから、なんの警戒もしないでお泊まりに行ける。

なんたって、あたしにとっておにーちゃんはトクベツな男のヒトだから――――



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大きなバッグを抱え、実家のある浅草から電車を乗り継ぎ、そしてバスに乗って、ようやく緑の多い町へと降り立ったあたし。

一見すると、この緑に囲まれた町の風景が東京のソレだと、にわかには信じられないことだけど、ココもれっきとした東京都内だ。

地方在住のヒトたちにしてみれば、東京＝大都会ってイメージがあるのかもしれないけど、２３区の外に出れば、東京都内でもいわゆる田舎そのものの風景が広がっているんだ。


ココは主に地方から東京に来たヒトたちが住むためのベッドタウンとして、山を切り開いて作られたとある新興住宅地。