恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
カギさえ開けば、あたし的には、おばさんにはもうなんの用もない。

「じゃ、あたしはこれで」

そう言って、さっさと部屋に入っていくあたしにおばさんが「お母さんによろしくね~♪」なんて言うけど、あたしは聞いちゃいない。

管理人のおばさんが、おにーちゃんとあたしの関係を本当の兄妹だと思ってるのかどうかは知らないけど、戸籍上はこれ以上ないってくらいにカンペキなる赤の他人だ。



      ×      ×      ×



とあるアパートの203号室、1LDKのこの部屋が大学生の頃からのおにーちゃんのプライベートルームだ。


部屋に来るまでは、今夜一晩泊めてもらうお礼に部屋の掃除でもしておいてあげようかと思ってたんだけど、実際部屋に入ってみると、オトコの一人暮らしにしては案外キレイに片付けられていた。

いや、もしかしたら白鳥とかいうおにーちゃんのカノジョが、部屋の掃除をしに来てくれてるのかもしれない。


だけど、部屋の壁に貼られた数枚の“水乃(みずの)るか”のポスターは、前にこの部屋に遊びにきたときのままだった。


< 48 / 263 >

この作品をシェア

pagetop