恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~

あたしが「赤井氏」と呼んだヒト――彼の名前は赤井英雄(あかいひでお)22歳。

あたしのココロのおにーちゃん♪

浅草の仲見世で、お茶屋さんをやってるあたしンちのお隣りさんで、おせんべい屋さんの一人息子。


あたしンちが“老舗のお茶屋さん”なのと同様に、おにーちゃんちもまた“老舗のおせんべい屋さん”で、お茶とおせんべいが切り離せないカンケーにあるように、あたしンちとおにーちゃんちもまた先祖代々ずっと家族ぐるみの付き合いがあるみたい。

だから物心ついた頃から、気がつくといつもいっしょにいたし、まるで血のつながった実の兄のように、おにーちゃんのことを慕っていた。



「ま、さすがに“手を上げて渡れ”とは言わねぇが、何十分も待つわけじゃねぇんだし、青になるまで待ってから渡れ。それが横断歩道を渡るときのルールだ」

「学校の先生みたいにカタイこと言わないでっ。青になるまで待ってたら学校に遅刻しちゃうよっ」

「……ってか今日からオレは学校の先生だぜ。ただし2週間の期間限定だけどな」

そう言って“フッ”と笑うおにーちゃん。


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