恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
“ふぅ”とため息をついて、おにーちゃんが言う。

「なんだよ……せっかくまたオレのこと、また“おにーちゃん”って呼んでくれるようになったのかと思って喜んだのによ……」

「…んなことより、ハラへったァ。メシまだァ、メシ、メシぃ」


寝言で「おにーちゃん」と言ってたのがめっちゃ恥ずかしかったあたしは、その照れ隠しでワザとオトコっぽい口調で言った。


「…って、お前もいちおオンナなんだから、ハラすかして帰ってくるオレのためにメシでも作って待ってたらどぅ~なんだ?」

「あっ。オンナがオトコのためにゴハンを作るのが当たり前だと思ってるなんて、赤井氏って思いっきし男尊女卑のヒトなんだねぇ」

そう言って軽蔑のまなざしを向けてみる。

「ちげぇよっ。別にそーいうんじゃねぇけど……ま、いいや。どーせ、そんなこったろうと思って“Hot Hot 弁当”買ってきたし」

「わぁ~い♪」

小躍りしてベッドから飛び起きると、おにーちゃんからホカホカのお弁当を奪い取って、テーブルの上に広げるあたし。

つやつやと輝く銀色のおコメからはユラユラと湯気が立ち昇っていて、キツネ色にこんがりと揚がった唐揚げの香ばしい香りはいやがうえにも食欲をそそる。
< 53 / 263 >

この作品をシェア

pagetop