恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「オイオイ、なにを今さら驚いてやがる。オレとピンクは許婚(いいなずけ)同士の間柄だろーが」


おにーちゃんの言ってることは間違いじゃない。

まだ結婚という言葉のちゃんとした意味も分からなかったくせして、小っちゃい頃のあたしはことあるごとに……、

「あたち、大きくなったらおにーちゃんのおヨメさんになるぅ~♪」

……なんて口走っていたもんだから、ついにはお互いの親同士が、本当にあたしとおにーちゃんを許婚に決めてしまったんだ。


「あのさぁ、許婚なんて大昔の風習が、今の時代にアリだと思ってるワケ? 赤井氏さぁ、時代錯誤なんじゃない? だいいち、赤井氏にはカノジョいるんだし、ジョーダンは顔だけにしてってカンジ?」

こんなふうに、わざとバカにしたような感じで言ったのは、あたしのココロの動揺をおにーちゃんに隠しておきたかったからだ。


「お前に他人(ヒト)の顔のことをどーこー言う資格はねぇんじゃねぇのか?」

「ウルサイ。あたしのことよか、赤井氏さァ、部屋にミニスカアーティストのポスター貼ったり、中学生の男子みたいにベッドの下にエッチな本とか隠すの辞めたらァ♪」

そう言って、あたしニンマリ。
< 55 / 263 >

この作品をシェア

pagetop