恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「…って、お前、見たのかっ!?」
たちまち慌ててベッドのほうに駆け寄るおにーちゃん。
「うわ、ホントに隠してたんだ? こないだ部屋に来たとき隠してたから、もしかしたら今日も隠してるんじゃないかって、あてずっぽで言っただけなのにさ♪」
「てっ前ぇ、カマかけやがったなっ」
「赤井氏みたいなやらしいヒトが学校の先生にならなくてホントーッによかったよ♪」
ベッドの下にエッチな本を隠してるっていうのは妄想だったんだけど、おにーちゃんが学校の先生にならなかったというのは現実だ。
ちゃんと教員免許までGetすることができたのに学校の先生にならなかった……いや正確に表現するなら“なれなかった”と言うべきかな。
「雇ってくれる学校がなかった」って、おにーちゃんが自分で言ってたから、あたしも悪くてそれ以上は訊けなかったけど……。
子供の頃からスポーツ万能で、学校の体育の先生になるために、親の反対を押し切る形でソッチ系の大学に進学したのに、夢の職業に就けなかったおにーちゃん。
結局、彼の就職先となったのは、学生の頃からアトラクションのバイトをしていた“東京メリーヒルズ”という名前の遊園地で、働きはじめてもう1年以上になる。