恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~

だから、ショーが終わるとチビッコたちお待ちかねのセンタイヒーローとの握手&サイン会がはじまったんだけど、あたしはその列には加わらなかった。

そしてココロの声で……、

“あ~ァ、つまんないの”

……ってつぶやいた。


せっかく、おにーちゃんのコネで遊園地のタダ券をもらえたってゆうのに、なんで、あたしひとりで遊ばないといけないワケ?

どーせなら、おにーちゃんの仕事が休みの日に、ふたりでデートしたかった。

でも今日は日曜だし、おにーちゃん、この炎天下に、仮面かぶって全身タイツ着てヒーローショーやらなきゃいけないんだよね。

おにーちゃんは、チビッコたちの憧れのヒーロー“センタイレッド”なんだし、それもしかたないか……。

小っちゃい頃はよかったなァ。

あの頃は、おにーちゃん、あたしひとりだけのヒーローだったから……。


そんなことを思いながら、長蛇の列のチビッコたちのために次々と色紙にサインを書き、そして握手をしているセンタイレッドを、ぼんやり見ているあたしがいた。


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