恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
額の真っ赤なバンダナこそ、ホンモノのおにーちゃんであることに何よりの証し。
「ピンク、大丈夫だったか?」
それに“桃香”であるあたしのことを“ピンク”と呼ぶニンゲンは、世界中におにーちゃんひとりしかいない。
「なんで、おにー……赤井氏がウサちゃんの中にいるの? 赤井氏はセンタイレッドのはずでしょ?」
「そ、そ、それはだな……」
よほど訊かれたくない質問だったのか、あからさまにおにーちゃんが動揺していた。
「このぬいぐるみ野郎、オレら無視してしゃべってんじゃねーぞ! ざけんなよ!」
ウサちゃんの着ぐるみの中から、首だけを出したおにーちゃんを威嚇するように、すごみを効かせた声で言う銀次。
「オイオイ、ふざけてんのはお前らのほうだろ? ふたりがかりで女のコいじめて、なにが楽しい? お前ら、女のコいじめるなんて、サイテーのサイアクだぞ」
「うっせぇな、テ前ェは黙ってろよ!」
「お前さぁ、遊園地に来て、そんな怖い顔すんなよ。ルール違反だ。ココはみんなが笑顔になれる夢の遊園地“東京メリーヒルズ”だぜ、ってんだ」