恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
言われてみれば、この紫苑ってヒト、黙ってツンとおすましなんかしてたら、いいとこのオボッチャマに見えるかもしれない。実際、何げにブランドものの服とか着てるし。


「お前、分かりやすすぎ」

不意に横からおにーちゃんが言った。

「え?」

「社長御曹司だと分かったとたん、お前の紫苑を見る目が、さっきまでとは全然変わってるし」

「そ、そんなことないよっ……」

そう言ってあたしはイチゴシェイクのストローにクチをつけた。

さすがは長い付き合いがあるだけあって、おにーちゃんにはあたしのココロの中が見透かされていたみたい。


「だがな、このオトコには気をつけろよ、ピンク」

「気をつけろ、って?」

「紫苑は……紫苑光一は別名“メリーヒルズの光源氏”と呼ばれるほどのプレイボーイで、後ろを向いて石を投げても、紫苑がつまみ食いしたオンナに当たるくらいだ」

「もぉ、センパイ、やだなぁ~、桃ちゃんの前で大ボラふかないでよぉ~」

「オレ、ウソと卑怯は大嫌いだぜ」
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