恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「たしかにね。たまたま社長の息子に生まれたってだけで、なんの苦労もしなくても将来は重役のポストが用意されてるんだとしたら、あたしら一般人がどんだけ頑張っても所詮はただの悪あがきって感じするもんね」
白鳥さんはそう言って、バニラシェイクのストローにクチをつけた。
その唇がツヤツヤしていて、オンナのあたしでもドキッとしちゃうくらいに色っぽい。
おにーちゃんがどーいう理由で白鳥さんと別れたのかは知らないけど、きっと最初は白鳥さんのこーいう色っぽいところに魅かれて付き合いはじめたんだろうと思う。
「でもセンパイだって“社長御曹司”じゃない? なんせ、老舗のせんべい屋さんの後継ぎなんだから」
クチのまわりをホットドッグのケチャップでべチャべチャにした紫苑さんが言う。
「うふっ、紫苑くん、子供みたい♪」
まるでやさしい母親のように、紫苑さんのクチについたケチャップをナプキンで拭き取ってあげる白鳥さん。
なんかいいなァ~、って感じがする。
たぶん白鳥さんのほうが年上なんだろう。
「ケッ。せんべい屋の御曹司なんざ、ちっともうれしかねぇや」