恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
機嫌悪そうに、大ぐち開けてバクバクとホットドッグに喰らいつくと、ズルズルと恥ずかしいくらいの大きな音を立ててチョコレートシェィクのストローを吸うおにーちゃん。

「そうかな? でもメリーヒルズは開園してまだ10年も経ってないし、そーいう意味では江戸時代からの歴史と伝統のあるお店の後継ぎに生まれるのって、なんかスッゲェうらやましいってゆーか、センパイがその後を継がないのは、なんかスッゲェもったいないような気がするな」


「するってぇと、なにか? お前はオレにせんべい屋の後を継げってのか? センタイレッドの役を降ろされたクセに、いつまでもみっともなく遊園地にしがみついて働いてんじゃねぇ、ってのか?」


鬼のような形相でおにーちゃんが言う。

唇からタラリと垂れた赤いケチャップが、まるで血がしたたっているみたいでマジ怖い。

コーフンして赤くなった顔と、唇からしたたるケチャップのせいで、まるで赤鬼そのもののおにーちゃんだった。


「せ、センパイ、なにもボク、そんなこと言ってないからっ……」

赤鬼ににらみつけられて思いっきりビビりまくっている紫苑さん。

「そーよ。そーいうの、被害妄想ってゆうんじゃないの? 英雄くん、おせんべい屋さんの話になると、すぐムキになるんだから」

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