恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
けど、次の瞬間、道路の段差のせいで自転車が大きくガクンとなって、思わずおにーちゃんの背中にしがみついてしまう。
「オイ大丈夫か、ピンク」
「う、うん、大丈夫、ヘーキ、ヘーキ♪」
目の前に、スーツを着たおにーちゃんの背中が見える。
小っちゃい頃「おにーちゃん、おにーちゃん」って言いながら、いつも追いかけ回していたおにーちゃんの背中が至近距離に見える。
そして、おにーちゃんの匂いがする。
あたしの14年間の人生の中で、困ったとき、辛いとき、悲しいとき、泣きたいとき、いつもおにーちゃんの匂いがそばでしていたような気がする。
そして、あのときもそうだった。
まだあたしが小学生の頃、鉄棒の“逆上がり”ができなくて、同じクラスでお寿司屋さんの子供・金太&銀次の双子に……、
「ヤーイ、ヤーイ、ケツが重くて逆上がりができねぇでやんの!」×2
……なんてハモッて言われて、わんわん泣きべそかきながら帰ってきたことがある。