君のモノ
「……じゃあ」
そう言って彼女は立ち上がった。
その姿を見て、俺は思わず腕を掴んでしまった。
「待てよ」
何言ってんだ、俺は。
親しい男女でも
引き留めるなんてことは
めったにしない。
ましてや、
今日の数十分前に会った奴。
普通では有り得ない。
「な…に?」
そりゃあ言葉も詰まるよな。
「…ここに居てくんねぇ?」
案の定、理解出来ていない様子。
けど、それは俺もだ。
自分自身、何を言っているのか
わからない。
どうしてこんなことを
言ってるのかも。
勝手に口が動いていた。
信じてもらえるなんて
思ってないけど、本当なんだ。