1人のお嬢様の願い
─『岬』
「え?あ…うん…じゃなかった…そうですが…?」
誰?この人。
なんで私の名前?
「あぁ、やっぱり。てか、俺同じクラスなんだけど。分かる?」
え、一人で納得されても…私は知らないよ。この人。
「…ん…分からないかも。…うん。分からない…。ごめんなさい。」
クラスメートの名前は全部覚えたはずなのに…。
恥ずかしい…。
ピシッ
「?!」
いきなり額を弾かれて、男子の方を見る。
近い………
いつまにこんなに近くに?!
「んじゃぁ、覚えて。
俺は倉薙岬[クラナギ ミサキ]。
あんたの下の名前は?」
もうちょっと近づけば、キスできそうな距離。
近いよぉ……
「三橋乃サン?」
うぅ……。
顔があっつい。
「え…と…。詩依良です。」
「ふぅん…。三橋乃詩依良…ね。よし、俺、詩依良って呼ぶから。」
てか、まだ近い………
「あ…うん…。」
う、うまくしゃべれない……
「俺の事は岬。でいいから。」
「わかったよ…。ねぇ…さっきから近い、よ?」
あぁ。言っちゃった…
顔、あっついよ…。
「くっ。…へぇ、詩依良ってそんな事言うんだ。」
なんで、私笑われたの?!
「?!」
いきなり髪を触られてビクッとなる。
「……意外。詩依良って、もっと冷たそうな感じしてた。」
やばい…。
かなり顔が熱い。
あいかわらず近いし。
髪触られてるし。
髪に触られるなんて、男子だったら旭だけだから。
変に恥ずかしい…。
「…気に入った。そんな、可愛い顔すると思わなかった。」
「か、可愛い?!」
声裏返ったよ…。
「うん。詩依良に話し掛けてよかったよ。」
み、岬って変な人だな……