1人のお嬢様の願い
─笑顔
案内を終わらせて、教室に向かっている私達。
「………」
「………」
き、気まずいなぁ…
「しぃ姉っ!」
すると、後ろから可愛い声で呼ばれた。
振り返ると、
「久しぶり〜」
「春音[ハルネ]!中等部なのにどうしたの?」
いとこの春音。実は双子の弟がいる。
「生徒会の雑務。高等部に用があったんだ!
……えっと。転入生さんですか…?」
あ…一瞬存在忘れてた。
堂浜さんに振り返ると、一瞬不機嫌そうになっていた表情をいつもの笑顔に変えた。
「はい。堂浜です。」
この笑顔本当に苦手…。
「堂浜…?堂浜瑚莉[コマリ]さんと関係がある方なのですか?」
「…はい。兄です。
違う学校だったので転入してきました。」
「瑚莉さん、お兄様がいらっしゃったんですね。」
妹いたんだ…
見えないな……。
「…では、私は戻ります。
しぃ姉、また今度。」
「えぇ。また今度。」
また、ふたりっきり…だ。
「……妹さんいらっしゃったんですか??」
すると、いつもの笑顔がない表情で、
「…はい。」
とだけ返された。
いつもの笑顔がない…?
堂浜さん、どうかされたのかな…?