1人のお嬢様の願い
─仲間入り
「飛翔くん、この子が私の娘の瑚莉だ。君の妹になる。」
「瑚莉です。よろしくお願いします。」
瑚莉とかいう奴は、なんか複雑そうな顔をして挨拶してきた。
堂浜さんの前の奥さんは、亡くなったって言ってたから、まだ受け入れられないのか…。
仕方ねぇよな。
俺だって、ずっと、母さんに本音を隠してるんだ。
まぁ、気づいてるかもしんねぇけど。
堂浜さんが嫌いなわけじゃない。むしろ、優しすぎて憎めない。
ただ、なんとなく、金持ちは信じれねぇ。
今までどっちかというと何げに裕福だった。母さん、部長だし。
なのに……だよな。
『金持ちは簡単に信じちゃいけねぇよ。』
…俺は父さんの言葉を……
「……信じすぎか…。」
「飛翔??あんた、どうしたの?さっきから、ぶつぶつぶつぶつ……。
というか、話聞いてたの??」
母さんが心配そうに覗き込んできた。
「え?…あぁ。悪い、聞いてなかった。」
「もうっ!このバカ息子が。マイペースなんだから!」
いや。あんたもな。
「だから〜あんたは瑚莉ちゃんと同じ学校に転入するの。わかった??」
「えぇ?!て、転入?!」
「そう言ったじゃない。」
「悪いねぇ、飛翔くん。君の学校はここから遠いだろう?瑚莉の学校は転入できるし、ちょうどいいだろうと思ってね。」
堂浜さん……いや、お父さん…は優しそうな顔で理由を言った。
「ということで、飛翔の学校の件は解決ね。」
おい!
このマイペース人間が!
何、勝手に終わらしてんだよ…。
…もう、二人は別の話で盛り上がってるし…。何歳だよ。まったく。
でも…母さんの幸せそうな顔、久しぶりに見たな。