1人のお嬢様の願い
「………しぃちゃんは嫌いにならなくていいんだよ。」
凪百合の小さい呟きに窓に向けていた視線を戻した。
「しぃちゃんは自分を嫌いにならなくていいんだよ。」
凪百合は目をみて真剣な表情をしていた。
「……私も凪百合も、ここが嫌いです。」
都流羽も目をみて話してきた。
「…でも、自分を嫌いになってはダメですよ…。」
「…しぃちゃん。自分を嫌いになったら、皆、嫌いになっちゃうよ。」
凪百合は悲しそうな表情になり、笑顔は消えていた。
「…自分に怒りを感じてもいい。でも、嫌いになってはダメだよ。」
「…自分の中で、戦わなければいけないんです。
怒りを感じていることと戦わなければいけないんです。」
都流羽にも笑顔はなかった。
「…しぃちゃん…。
人形にはなりたくないんでしょ?
…なら、戦わなきゃいけないよ。
…自分にも。お父様にも。」
「…反抗しているだけじゃダメなこと気づいているはずですよね?」
都流羽と凪百合は……
知っていたんだ。
「……えぇ…。
そんなこと、前から気づいているわ。でも、意地をはっているのよね。」
「…しぃちゃん。
すぐには無理でも、向き合わなきゃいけないよ。」
凪百合……
「ちゃんと伝えなければいけません。」
都流羽……
変わらなきゃ…
「…変わらなければいけないのよね。」
ありがとう。
気づかせてくれて。
「ありがとう都流羽、凪百合。」
ありがとう、
私を知っていてくれて。