1人のお嬢様の願い
─『凛の』
「失礼します。」
「なぁに?」
扉の所に立っている凛に尋ねた。
「あの…お、奥様の。お手紙でございます…。」
言いにくそうに言った、凛は俯いたまま顔をあげない。
毎日くるお母様の手紙。
実は、読んでいない。
凛はそれを知っているから…
「…ねぇ、凛。」
「はい?」
凛が俯いていた顔をあげた。
「敬語じゃなくていいよ。
……ねぇ、変わる。って何なのかな?」
いきなりの質問に凛は驚いた表情をした。
「…詩依良?」
「…凛は私をどう思ってる?」
凛に向けていた視線を窓に移した。
しばらく、沈黙が続き、しゃべったのは凛だった。
「……詩依良は。
……詩依良は、もっと伝えなきゃダメだよ。」
「…え?」
凛を振り返り、驚いて視線を合わせた。
「…自分の気持ちを大事にしなきゃダメ。
自分の言いたいことを伝えなきゃダメ。
前も、言った気がするんだけどなぁ。」
凛はクスッと笑うと優しく微笑んできた。
「…いっつも、一番大切な自分を犠牲にする。」
はぁとため息をついて、もう一度凛は私を見て、微笑んだ。
「…私は、そんな詩依良は嫌だよ…。」