1人のお嬢様の願い
凛がでていった後、ベランダのドアを開けて外にでた。

凛に言われたことを思い出す。

『いっつも
 一番大切な自分を犠牲にする』


「…私そんなことしてたかな。」


空を見上げる。
久しぶりに見た星はとてもキレイだった。

もう、7月。
まだあまり暑くないけど


…今思ったけど、堂浜飛翔。
本当に微妙な時期に転校してきたのね……。

ってことは、前の学校を3ヶ月しか行ってないじゃない。
どうでもいいけど…。



一度部屋に戻って、お母様の手紙を手に取る。

…もう、ずっとちゃんとしゃべってない気がする。

夕飯では会ってるんだけど
お母様は私をじっと見てるか、学校の様子を聞くだけ。

笑っているけど、やっぱり悲しそうな顔。
私はバレないように笑顔でいるのに。


「……バレないように……。」


小さく呟いた。

そんなこと、お母様は望んでない…のかな。

バレないように、なんて。

「…ばかみたいね…。」

親に感情を隠すなんて。


お母様の手紙を持ってベランダにでる。

まだ、ほんの少し涼しい風が頬をなでる。


自分の長めの髪を後ろにやって、手紙に手をかけた。


……お母様は、


どんな風に思ってるの…??
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