1人のお嬢様の願い
「手紙読んでくれたのかしら?」

「…はい。」


「あらぁ!なんで敬語なの?
この際、堅苦しいことはやめましょ。」

元気よく言ったお母様はそのまま続けた。

「私はあなたに聞きたいことがあるんだけど、あなたの方が私に何か聞きたそうね?」

そう言ったお母様に驚いて、少し下にむけていた目線をあげた。

「え?!い…や、そんなことは…」

「ふふっ。どうぞ?聞くわ。」


き、聞きたいこと…。
ない、訳じゃない。
さっきから、頭の中を渦巻いている気持ち。


でも、口に出すのは怖くて。

……、でも。

「…お母様…。」

私は変わるから。


「あなたは私をどう思っているのですか?」

「…あなたを……?」


お母様は少し目を伏せた後、私の顔を見た。



「もっと…あなたの気持ちを言ってほしいわ。」

悲しそうにそう言った。

「…え…?」

「あなたは私に極力、感情を見せないようにしているでしょう?」

……知ってたんだ…。

「…あなたが、そういうふうになってしまったのは私のせいなのかもしれないわ。」

「そ…!そんなことっ」

私は驚いて声をあげた。


お母様のせいなんかじゃない。

「お母様の…せいじゃない…。」

感情を見せるのが怖いの。
お母様も…
お父様のように、



私のこと………




《興味がない》



お父様の声が聞こえた気がした。




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