世界は残酷な女神の笑みを理に

第一楽章一節｢平和は世界の上辺､飾りである｡｣

君は何を望む…｡



金？



愛？



友情？



平和？



それとも……───




ただ…､生きたい…｡



死にたくないんだ…!!



助けてくれ…助けてくれ!!




｢ん…､んん…｡｣



瞳を開けば広がるのは薄暗い天井｡
起き上がれば､夏という季節だからか薄く湿ったシャツが肌に張り付く感覚に気持ち悪さを覚えていた｡



もう１日経ったのか…｡

"この"世界が始まってから…｡



１日前｡


──…ﾋﾟﾋﾟﾋﾟ｡



目覚ましの音が脳内に響き､夢という現実を忘れさせてくれる世界から引き戻され､不機嫌そうに澄川 蓮(ｽﾐｶﾜ･ﾚﾝ)は上半身だけを起き上がらせた｡
一人暮らしを始めてから二ヶ月程だろうか…､綺麗な空間で自分一人では広過ぎると思っていた部屋は布団や食べたままのカップヌードルの残骸等で汚れきっていた｡


｢暑い…｡｣


無造作に起き上がった蓮は冷蔵庫の扉を開き､中にあった麦茶の入っていたペットボトルを手に取っては､キャップを開けてそのまま飲み始めた｡
静かな部屋の中に麦茶を飲み下す喉の音だけが響き渡り､窓の隙間からは外でやかましく鳴き喚く蝉の鳴き声が耳に入って来た｡