世界は残酷な女神の笑みを理に
民家より離れた敷地内に、暗い影が落ちた気がした。


「おい、勝弥。正気か?俺らに死ねって言うのかよ。」


「ああ。」


「アンタ、金と私達を天秤に掛けて、金を取ったっての?」


「ああ。」


ポーチのチャックが食らった人の命を閉じ込める様に、ゆっくりと閉まっていき、勝弥はポケットから小型のサバイバルナイフを取り出した。


「ま、友情云々よりも、世の中は金って事だ。」


「…っ、クソ野郎が!!」


刃の刀身は、目に見える程の殺意を纏って、迷いなく二人に向けられた。
流石に抵抗しようにも、凶器を持つ勝弥に素手で挑む事は厳しく、章は近くの壁に立て掛けてある鉄パイプに向かって、バレない様に後退り始めた。


「芹香ー…、チャンスをやろうか?」


「チャ…ンス?」


「そうだ。お前がウンと一回頷けば、お前も、もしかしたら章も助かるかも知れないんだぜ?」


勝弥の突然過ぎる言葉に、芹香は眉を潜め、半信半疑な瞳で、誘う様に見つめて来る勝弥を睨み返した。
しかし、今の状況で勝弥に逆らえば、確実に刺されるか、玉を取られて殺されてるかの二択しかない。
その二択を三択に出来るチャンスがあるのなら、それに従う事を強要されている様なモノだった。


「な、何なのよ?…条件は。」


「──…条件か?へへ、お前が俺の女になる事だ。」
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