世界は残酷な女神の笑みを理に

｢な…っ!?｣


｢勝弥!!お前､何を汚い真似してやがんだ｡芹香の気持ちは…──｣


｢てめえは､引っ込んでろ!!気持ちー？はっ､馬鹿馬鹿しい｡さあ､芹香!!どうするよ？｣


｢……､私は｡｣


太陽の陽射は此所まで冷たかっただろうか？


全身から熱が奪われていく様な感覚に襲われながら､勝弥の言葉が芹香の頭の中で､何度も復唱されていた｡
此所で頷けば､二人共無事になる｡
そう分かっていても､芹香の頭は意思に反して縦に振ろうとはしなかった｡


｢お前を殺したかねーんだよ｡だ､か､ら…な？芹香が俺に愛を誓えば､金もやるし欲しいモンは買ってやるぜ？金なら､奪えるしな｡｣


｢…っ…！分かっ──｡｣


｢…よう､待たせたな｡｣


静かに息を吐き出し､心に強く芽生える恐怖心を押え込みながら､紡ぎかけた芹香の言葉を遮る様に自転車のブレーキの音と共に蓮の言葉が場に響いた｡
構えられたサバイバルナイフは勝弥の背に隠れて見えなかったのだろう､深刻な雰囲気すら､先程の出来事が何度も脳裏を過ぎり気が付く事が出来ていなかった｡