世界は残酷な女神の笑みを理に
昼前の太陽が照り付けるアスファルトの斜面を滑る様に下りながら、蓮は一人、静かに深い息を吐いた。


─…俺は…、初めて人を殺してしまった。


自らが手を掛けた訳じゃない。

然し、死ぬと知った上で其を実行したのは俺だ…。


俺は…、犯罪者なんだ。


「警察沙汰に…、なるよな。」


もし、警察に連絡されたら…、杉村のズボンから指紋が検出されたら…。


体は恐怖に正直なのだろうか。
ハンドルを握る手の震えが止まらない。


いつもと変わらない風景と思っていた。
だが、坂を下りて辺りを見回せば周囲には電信柱に寄りかかるサラリーマンらしき男の姿に、道路に横たわる主婦の姿…。


──…!


その時、蓮のポケットが場の空気を引き裂く様に震動した。
俺は肩を震わせては、自転車のペダルを全力で漕ぎながら携帯を取り出して、ゆっくりと開いた。
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