Darkness Butterfly
黒髪が驚きを隠せないような顔をする。
「夏弥。消毒液。」
茶色い髪は黒髪から放られた消毒液を脱脂綿につけて、あたしの腕に塗った。
また悲鳴をあげそうになった。
でもそこは我慢して、茶色い髪の腕に爪をたててやった。
「いてーよ。つか、あんなに蹴られてたくせにこれ位で爪たてるな。」
茶色い髪はそう言ったけど、腕を振りほどこうとはしなかった。
消毒が終わって、あたしはノロノロと立った。
「お前、帰る家あんのかよ。」
手首を捕まえられた。
あたしは頷く。
あたし、家くらい持ってる。
「本当に?」
横から黒髪が聞いてくる。
これ以上、ここにいると大変だと思い嘘をついて頷く。
そして無理に笑った。
「大丈夫。」
「お前なぁ。」
茶色い髪がこっちを睨んでくる。