Darkness Butterfly
良壱の強張った声が車内に響く。
表に出た…?
表に…
「乱闘が起こるかもしれないってこと。」
あたしの声は、疑問形にはならなかった。
「あぁ。」
良壱は答える。
そんな悲しそうな顔するなら、返さなくてもいいのに。
でも、それが良壱の優しさなのかもしれない。
「…那瑠ってさ、なんでお兄ちゃんとか呼ばないの?
同じ家で育った兄弟なのに。」
夏弥は言う。
あたしは、
「…なんでだろ…?」
と言葉を濁した。