Darkness Butterfly
十字架
あたしは目をこすった。
「眠いのか?」
良壱がソファーに座って上から聞いてくる。
「全然。」
床で横になりながら、テレビを見てるあたしは答えた。
「なに。」
こっちを見下ろす良壱を見た。
「寝るんなら、ベッドで寝ろ。」
顎で部屋の外を指す。
「寝ない。」
とか何とか言って、瞼が重くなるのを感じた。
「歯も磨け。」
あたしは眉を寄せて、洗面所に向かった。
良壱の家は大きい。
でも物が少なすぎる。
あたしの家を綺麗にしたらこんな風なのかな。
買って貰った紅の歯ブラシをくわえた。
しゃこしゃこと磨いてると、自分の首を見た。
十字架のネックレス。
会った時に、良壱から貰ったモノだった。
外すと変な感じがした。
いつも首周りに何かがかけられているからかな。
何か、彫ってある。