恋もよう

そう呟いたのは、今来たばかりの蓮の方。
その言葉の理由は、遼がまだ野球部のユニフォームを来たままだからだ。
いつもなら、既に制服で目の前に座るはずなのにと、まだ眠気が残る頭でも違和感を感じる。

「まぁな!でも着替えてからだと礼を言う時間ねぇし。って、いつもの癖で座ったらダメじゃん!」

そう言って笑いながら席を立つ遼は爽やかそのもの。
わずかに埃の匂いや汗の匂いがしても、部活に燃える高校生って『遼らしい』と思える。
着替えてくるわ、と立ち上がった遼は

「今日から夏の大会に向けて強化練習なんだよ〜。マジきつい!朝早くから夜遅くまでなんだぜ〜?」

そう言って口を尖らせているが、顔は笑っている。
部活が楽しくて仕方ないのだろうとわかる表情に、蓮はハイハイと相槌を打つと早く行ってこいよ、と手のひらをヒラヒラさせた。
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