学園(序)
俺達は町のコンビニに来た。

吟ネエの顔が強張っているのが解る。

何故なら、俺達はコンビニのおにぎりコーナーにいるわけだからな。

俺は新発売と書かれた、おにぎりを一つ取る。

「おーさけ(おー鮭)」

鮭のおにぎりを吟ネエの前に出しながら、辺りを凍えさせるような駄洒落を言ってみる。

次の瞬間、吟ネエの後ろに鬼神が見える。

悪寒が走った後で、冷や汗をかきながらも聞いてみる。

「1発ですか?」

「NO」

「2発ですか?」

「NO」

「満足するまでですかあああ?」

「YESYESYES」

そんなやり取りをした後で、神速五段突きを体中に当てられる。

後方にぶっ飛び床を滑って、コールドドリンクコーナーのガラスに頭をぶつける。

黒猫が助かったのなら安いものだなどと、格好いい台詞は言えない。

痛すぎる。

ただでさえ強い吟ネエの本気に近い拳を食らったんだ。

吟ネエは俺を無視して、コンビニを出て行ってしまう。

「ちょ、ちょっと」

足をフラフラさせながら、俺は立ち上がる。

まずいぞ。

吟ネエはストレスを発散させるために、男の生気を吸うつもりだ。

「くそ、余計な冗談なんか言うんじゃなかった」

走ってコンビニから出ると、吟ネエが遠くで男に話しかけている。

それも、いかにも危ない感じのする人たちだ。

タンクトップにタトゥーの入った腕、そりゃ冗談になりませんよ。
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