学園(序)
傍まで駆け寄ると、吟ネエとヤンキー達との会話が聞こえてくる。

「酒をご馳走するなら、一発やらせてやるアル」

チラリズムで、スカートをめくって太ももを見せる。

「新手の勧誘か?」

「本当ならいい思いできるよな?」

戸惑っていても、太ももの誘惑は大きい。

このまま行くと、裏路地直行コースだ。

吟の写真とか取られると、非常に厄介だ。

ミスをする前にのしてしまいそうだけど、未然に防ぐことが出来るのなら止めたい。

「今なら出血大サービスで色んなことをしてやるアル」

舌で唇を舐める仕草は、男にとってはたまらないものだろう。

普通ならありえない仕草なのだが、吟ネエがやると本当にエロい。

強面ヤンキー達の卑下視線は、獣を狩る恐ろしさを感じ取れる。

「酒なら俺が驕るから!」

吟ネエと強面ヤンキー達との間に入って、注がれている視線をカットする。

「何だテメー?」

おあずけを食らったヤンキーのフラストレーションは一気にピークに上がっているだろう。

俺だって、好きなラーメンを目の前で食べられたら腹が立つ。

でも、この場合は行かせてはならない。

「鮭野郎アルか」

「さ、さっきのはほんの軽い冗談だって」

「私はそんな冗談は好かないアル」

俺を押しのけようとしたが、力を入れて前へ行かせない。

「吟ネエの好きな『空』を買うから!それで手を打ってくれ!」

「ほう」

一日に二回もピンチになるなんて、聞いてねえよ。

「何でもいいけどどけよ。この姉ちゃんは俺達と行く方がいいんだよ」

「あんたら格好いいんだからさ、他頼むよ」

「はあ?」
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