学園(序)
酒屋『梵天』の中には一般的なお酒から、希少なお酒まで置いている。

商店街の店が潰れていく中、ここはデパートには売ってない酒が置いてあり、酒好きに人気があるので古くから続いている。

「お吟ちゃんやん、お酒買いにきたんか?」

酒屋で働いている看板娘であり、一人娘の梓さんがいる。

「『空』を二本」

財布の中身は足りるくらいの金額は備えてある。

「ええもん買ってくれるのはええんやけど、未成年やねんから、成人連れてこな売られへんで」

最近は、規制が厳しくなる一方だから、仕方ないといえば仕方ない。

吟ネエの体がプルプルと震え始めている。

まずい、非常にまずい。

我慢が嫌いな吟ネエが、おあずけを食らう事数回。

良くもったほうだ。

「これ以上、体の乾きは我慢できないアル!」

「わあ!ちょっと、待て待て待て!」

どこかへ走り出しそうな吟ネエの体を羽交い絞めにしているが、このままどこかへ運ばれそうである。

「梓さん!今回だけ特別で頼むよ!このままじゃ吟ネエが暴走しちまう!」

「えー、こっちも商売かかってるんやけどなあ」

「近所のよしみじゃないか!」

火事場のくそ力か、俺の腕から離れてしまいそうだ。

「丞はお吟ちゃんのこと大切やねんな」

「当たり前だろ!っつうか、いいよな!?いいんだよな!?」

「売ったるけど、周りの人には内緒やで?」

「やっぱ、梓さんは一味違うぜ!」

そして、俺は鎮静剤となる『空』を手に入れることが出来た。
< 14 / 101 >

この作品をシェア

pagetop