学園(序)
その日から、何もする気が起きなかったな。

部屋の片付けや、入学する事が出来た学園へ行く事も、何もかもやる気が失せた。

とても憧れだった人がいきなり男と部屋から出てくるんだぜ?

耐えられなかったな。

でも、吟ネエにはそんなこと関係なくて、日に日に違う男を連れてきていた。

俺はそれを見るだけで、学園に行かず過ごしていた。

渚さんは『避妊はするんですよ』ぐらいしか言わなかった。

毎日毎日、懲りないなと思い始めた頃には、色々と整理はついていた。

人は変わるんだ。

吟ネエには吟ネエの生活スタイルがあって、それを楽しんでいる。

吟ネエが尻軽だからといって、俺の中で何かが変わったわけじゃなかった。

これといったきっかけはなかったけど、時間が傷心した部分を癒たんだと思う。

吟ネエの事は嫌いというだけの感情にまとめられなかった。

小さい頃の思い出を頭の中で反芻し続けて、それでもって、今の吟ネエのことも頭の中で反芻し続けて、色々な表面を頭の中で見続けた。

その時、『寂しい』という感情が表に浮上してきた。

せっかく再び会えたのに、何も話すことなく部屋の中に閉じこもってばかりで、バカみたいだった。

結局のところ、何がきっかけで色んな男と寝るようになったのかはどうでもよかったんだ。

殻に閉じこもっていても、吟ネエと話すことが出来るわけじゃない。

俺はまた吟ネエと色々な事を話したかったんだ。

吟ネエの人柄が好きで、異性交遊がどうであれ、一緒にいて楽しかった記憶がある。

俺が出来る事は吟ネエと話したり、異性交遊の幅を狭めることぐらいだ。

それと、今の吟ネエのことを知る事だ。

数週、渚さん達には迷惑をかけた。

ご飯を作ってくれたりしたけど、食べなかった日があったり、声をかけてくれたのに適当に返事をしたり、本当に嫌な奴だった。

だから、少しだけ整理が付いた時に、謝った。

渚さんは笑顔で「今度は一緒にご飯を食べましょう」とだけ言ってくれた。
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