学園(序)
一言言おうと、吟ネエの部屋に向う。

「吟ネエ、入るよ」

一応、女の子だしノックをしてから入る。

「酒瓶はちゃんと自分で下に持っていってくれって、寝てるのかよ」

少し酒臭さを漂わせた部屋の中で、酒瓶を抱いたまま床で寝ている吟ネエがいる。

黒いパンツと胸だけを隠したシャツを着ているだけで、へそなどは丸見えである。

「渚さん、もうちょっと躾けたほうがいいですよ」

色々な部分を改めなおさなければならないところが多々ある。

本人が聞くかどうかはわからないけど、やらないわけにもいかない。

本当に、将来が心配になってくる人だ。

男を虜に出来る技術はあるので問題はないとは思うが、こんな姿を見たらなあ。

「風邪、引くぞ」

ベッドの上にある布団をかけてやる。

「ふう」

そういえば、酒のニオイを消すために消臭剤を部屋に置いたはず。

吟ネエのことだから、くせえアルとか言って捨てちゃいそうだ。

でも、ちゃんと置かれてあって、すでに中身はなくなっていた。

「ちゃんと、補充しとかなくちゃ駄目だな」

これじゃ、男が寄ってこねえよ。

でも、最近、男を家に呼ぶ事がなくなってきた。

外では色々とやってたりもするんだけど、家の中ではしなくなったみたいだ。

理由はわからないけど、見なくていいものや聞かなくていいものが増えてくれるのはありがたいものだ。

喘ぎ声を聞かされるのは、癒えた傷に塩を塗るようなものだ。

今日だって、本当は嫌だったんだけどな。

ま、そこは変わらないからな。

「吟ネエ」

吟ネエの寝ている姿を見ていると、胸が高鳴る。

普段からは考えられないような静けさだ。

イタズラするのはありか?

こっそりなら、いいかもしれない。
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