学園(序)
そっと、寝ているところに近づいていく。

布団をかける時も何もなかったし、大丈夫だろう。

「起きるかな?」

そっと手を伸ばしたが、吟ネエが寝返りを打って届かなくなった。

「うーん」

もう一歩手を伸ばしたが、また寝返りを打って届かなくなる。

「まさか、起きてるのか?」

でも、気持ち良さそうに寝息を立てて眠っているぞ。

もう一回手を伸ばそうとしたとき、思いとどまる。

「俺は、何をしようとしてたんだろう」

このまま寝てるところを触れてしまえば、他の奴らと同じになってしまう。

確かに、俺は男で女の子に興味があるし、吟ネエのことも気になっている。

触れたい願望だって、人一倍あるといっていい。

でも、違う。

体だけで割り切る関係なんて、何の特別にもならない行きずりの男じゃねえかよ。

プラトニックでなければならないという制約はないが、寝込みで色々触るのはよろしくない。

それに、吟ネエだって普段は絡んでくれているけど、性交は別だろう。

俺は格好よくないし、何か特別なものがあるわけじゃない。

彼氏でもセフレでもないんだ。

頭を振って、冷静さを保とうとする。

頭よりも股間に血が流れているせいで、判断力が鈍るんだ。

「吟ネエ、ゆっくり休めよ」

無理矢理にでもこの部屋から出ようとする。

「バカアルな」

「え?」

長くいすぎたのか、後ろを見ると吟ネエはすっかり目を覚ましていた。

「何もしないなんて、つまらんアルな」

「誘ってたのかよ?」

酒瓶を床において、吟ネエが座り直す。
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