学園(序)
「消臭剤は好意でやったんだ。それと、俺は吟ネエを嫌いにならないよ」

それだけは人がなんと言おうとも、宇宙の真理であり、絶対だ。

「ふうんアル」

興味なさそうな顔つきで、顔をそらした。

「あまり興味ないか。寝てたところ邪魔して、ゴメンな」

今度こそ部屋を出て行こうとする。

「今度はさわやかなニオイのやつがいいアル」

吟ネエは完全に眠気が取れていないらしく、今度はベッドに横になっている。

俺からは顔が見えない。

「解ったよ。頭がすっきりするやつ買ってくる」

結局、消臭剤を手に入れるだけで、吟ネエとのやり取りが終わった。

ドアを閉めて、俺は宙を見上げた。

吟ネエにとって、俺とはどんな存在なんだろう。

さっきの感触からすれば、性行為が出来る他の男と一緒なんだろうな。

「はあ」

特別までは遠い。

果たして吟ネエの中に特別が存在するのかわからない。

吟ネエが好きになった人とかいるのかな。

しばらく、出会わなかったからいたかもしれない。

その人にはどんな魅力があって、吟ネエにどんなことをして、好きになってもらえたんだろう。

解らないな。

一ついえるのは、俺は俺なりの方法でしか吟ネエに認めてもらえないということだ。

好きになった奴がこれをしたから、こうした方がいいよっていうのは二番煎じしかなく、一生、追い抜くことはなくそのままなんだ。

気にはなるけど、見えない奴に執着するのはよそう。

足元が見えなくなる原因でしかない。

「まだ時間はあるかな」

俺は消臭剤の代わりを買いに行く事にして、考えを中断した。
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