学園(序)

先輩

吟ネエとのやり取りがあってから数日。

何かが変わったわけじゃなく、同じ日々を過ごしている。

今朝は、吟ネエをいくら起こしても起きなかった。

「今日は眠いから、起きないアル!」と怒鳴られて、部屋を追い出された。

時間が迫っていたので渚さんに任せることにして、先に家を出た。

学校をサボりがちでちゃんと卒業できるのかな。

「はあ、困ったなあ」

年下の俺に心配されてて、吟ネエも嫌かもしれないな。

でも、一年間、吟ネエのことを見てきたけど心配せずにはいられないぜ。

余計な世話かもしれないし、ウザがられてるかもしれない。

それは自分でも解ってる。

でも、吟ネエのために何かをしてあげたくなるんだよね。

放っておけないオーラを出しているように思える。

それは、龍先輩にも言えるんじゃないかな?

「ワラワがどうしたのじゃ?」

「龍先輩、いつの間に」

学校への行き道、一人で歩いていたかと思いきや、隣には龍先輩が歩いていた。

龍先輩は俺の足取りに合わせて、大またで歩いている。

小柄だから、そうしないと追いつけないのだろう。

龍先輩は可愛らしい人である。

ストレートの黒髪。

前髪を左右、十字のクリップで留めていて、後ろ髪は股ぐらいまである。

ただでさえ、手入れするのが大変そうなのに、髪は綺麗に潤いを見せている。

家がお金持ちだけど、お金を見せびらかしたりはせず、いたって普通の人を装っている。

本人もお金に執着しているわけでもない。

財布とか、私服などは、ブランド物を一切使っていない。

そんな先輩だから好感をもてるし、ついつい話したくなる。

出会いは特別でもなく、吟ネエと歩いていたら話しかけられた。

そこで紹介を経て、今に至るわけだ。
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