学園(序)
「先輩はいつも可愛らしいと思いましてね」

「こら、皆までそのようなことを言うでない」

少し照れながらも、眉をハの字にして怒る。

本気ではないみたいだけどな。

「素直な気持ちを龍先輩に伝えただけです」

「年上をからかうとは、吟に毒されおったか」

信じてくれてないみたいだ。

「まさか、吟ネエと同じ屋根の下に住んでるとはいえ、感化されることはないですよ。まあ、そんなに嫌なら、訂正しますけど」

「嫌とはいうとらん。ん?そなた、ワラワのことを可愛いと申したな?」

「ええ」

何かを思い出したように、嫌な笑顔を浮かべる。

「ならば、ワラワのことを姫ちゃんと申してみよ」

「断る!BY葉桜」

「むう、そなた、相変わらず頑固な奴じゃのう」

「もし、龍先輩が彼女だった場合、好きなだけそう呼びますよ」

でも、先輩が彼女になるなんてこと、万が一にもないな。

俺にとっては高嶺の花。

俺じゃ釣り合わない、自分でも思うし、誰もが思ってるさ。

釣り合うには幾千万もの努力をすればいいんだろうけど、面倒くさいな。

龍先輩には悪いけど、そこまで出来るキャラでもない。

きっと、もっといい男が出てきて、幸せな家庭を築くんだ。

おっと、フニャチンキャラみたいなネガティブ思考が働いたが、そうじゃない。

龍先輩には幸せになって欲しいんだぜ?

だったら、もっと出来る奴が傍にいたほうがいいだろ?

まあ、俺自身を出来損ないと思っているわけじゃない。

でも、人はわからないからな。

俺が本気で龍先輩を好きになってアプローチをかけたら、もしかすると、なんていう都合のいいこともあるかもしれない。

いや、さっきも言ったとおり、色々自分を変える努力をしなくちゃ何もないさ。
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