学園(序)
「先輩、もういいです」

まだふらつくけど、歩けないわけじゃない。

そっと離れて、一人でも立てるところをアピールする。

本当は、すぐにでも横になりたかったりするんだけどな。

「そなた、無理はしておらんか?」

「はは、先輩の膝枕で寝ることが出来たら、完治しそうだなあ」

「軽口を言えるのなら、問題はなさそうじゃ」

再び歩き出して、靴箱まで辿り着いた。

先輩との朝の時間は終わってしまう。

寂しい気分に浸ってしまう。

「表情に出る奴じゃのう」

「え?」

「そのような暗い顔をされては離れにくくなるではないか」

やっちまったか。

「龍先輩の膝枕の気持ちよさはどうなんだろうと思いつめてたんです」

「本当か?」

「やだなあ。人が傷つく嘘はつかないと決めてるんです」

「いい心がけじゃ」

お互いに靴を履き替えると、予鈴のチャイムが鳴る。

「急がねばならぬな」

「先輩、今日の昼とか時間ありますか?」

「特に予定はないが?」

「じゃあ、一緒に昼飯を食べませんか?」

今日は吟ネエがいないから、二人でゆっくり出来るだろう。

別に吟ネエがいて欲しくないというわけじゃない。

たまには二人で昼食を食べるのも悪くないということだ。

「そなたも変わり者じゃ」

「当然の欲求ですよ。可愛い人と一緒にご飯を食べる。これがおいしくなる秘訣です」

「ふふ、本当に変わっておる。良いぞ。そなたと共にしよう」

「ありがとーごぜえめーす」

こうして、俺は龍先輩との昼食タイムの約束をこぎつけて、別れることとなった。
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