学園(序)
「言い訳すんな!」

「いて!」

丸めた教科書でどつかれることとなった。

「お前が品定めをしていようが、家族の心配をしていようが、授業を聞いてないのは同じ事だ」

「危篤の家族のことを心配してはならないと?」

「嘘をつくな!」

さらに一発。

「危篤なら学校に電話がかかってくるだろう。やる気がないのなら、出て行け!」

「えー」

やる気がないといえばそうだが、出て行くと後々面倒だ。

怒りはないのだが、勢いに任せて出て行くのは愚の骨頂である。

「やる気はありますよう。授業進めてください」

「イマイチ信用できんな。まあ、いい。今読んだ質問、答えろ」

聞いてないのに解るわけねえよ。

その時、隣の席の女生徒から上手い具合に手紙が回ってくる。

そこにはどこを質問されていたか、書かれてあった。

「人間五十年 化天の内をくらぶれば 夢幻のごとくなり」

「ほう、聞いていたか。まあ、許してやる。よし、授業を続けるぞ」

助かったな。

それより、隣の女子に礼を言わないといけないな。

隣って問題児の乾じゃなかったか?

隣を見ると、教師が見てないことをいい事に飴を口に放り込んだ。

一応、手紙にありがとうと書き込んで、乾の机に置いた。

受け取った手紙を読むが何ら変わった様子もなく、手紙を机の上に置いたまま、前を向いていた。

反応が薄いものだ。

まあ、これ以上、関わり合いになることはないだろう。

後10分程度で授業が終わるので、集中する事にした。
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