学園(序)
あっという間にチャイムが鳴って、授業が終わる。

麗しきご褒美があると違うな。

教師が出て行くと、皆も一斉に動き出した。

俺も食堂に行ってから、先輩の下に向おう。

その前に、隣の乾にもう一度だけ礼を言っておこう。

手紙だけじゃ、ちょっと重みが足りないぞ。

「乾」

隣を見るとすでにいない。

いつも学校に持ってきている、禍々しい大きな物も一緒になくなっていた。

「早いな」

乾 楓、名前どおり女であって、ショートカットの黒髪。

変わっていることといえば、左目に零と書かれた眼帯。

鞄の他にギターを入れる用みたいな黒い袋に何かを入れて持ってきている。

自分から発言することはあまりなく、静かなイメージがある。

禍々しさを感じるが、害を出してるわけでもないので良しとしよう。

しかし、俺に助け舟を出してくれたのは何故だろう?

「まあ、いいか」

それより、食堂に行ってパンを買わなくちゃなくなっちまうぜ。

教室の奴らもほとんどいなくなってしまっている。

今日はおいしいパンを買えそうにないかもしれないな。

俺も教室から出て食堂に向おうとしたところ、教室の前に龍先輩がいた。

「先輩」

「そなた、食堂へ向おうとしておったのか?」

素晴らしいくらいの先読み。

「そうなんですよ。昼食がないと一緒に食べるという目的が達成できないです。そんなの駄目なんですたい」

「そうか。ならば、ワラワも一緒に向おう」

「結構混雑してますよ?」

先輩の手には弁当袋があるんだけど、無茶をする必要があるのか。
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