学園(序)
「ワラワもたまにはパンが食べたいのじゃ」

食堂に向いながらも会話をする。

「でも、弁当を持ってきてるじゃないですか」

先輩がそれなりの大きさの弁当とパンを食べるとは思えないな。

途中で残すなんてもったいない。

「そなた、ワラワの物を食べるか?」

「それじゃあ、先輩が疲れる一方じゃないですか」

俺が努力せずに弁当をゲットするなんて、都合が良すぎる。

先輩のことだから、自分の分は自分で買うとかいいそうだ。

そしたら、俺はタダで手に入ることとなる。

「些細なことじゃ。気にするでない」

「気にしますよ」

先輩だけが苦労をする人生なんて、俺は嫌だぞ。

「じゃあ、俺がパンを買います。それを取替えましょう」

最初の目的どおり、俺がパンを買えばすべて済むんだ。

「うーむ」

「弁当が無駄になりますからね。先輩はパンを買う必要は一切ありません」

「むー、ワラワはあの群れの中を買いにいきたいのじゃが」

「あんな危険な場所に行かせられません」

「ワラワの意見は通らんのか」

「先輩がパンを食べるってところと、弁当をくれるってところだけは通しますよ」

もみくちゃにされる姿を想像できんな。

むしろ、髪がぐちゃぐちゃに乱れてるなんて想像したくないぞ。

「そなた、本当に頑固な奴じゃ」

「頑迷のろくでなしなんですよ」

食堂に辿り着くと、案の定、学生達がおしくら饅頭をしている状態であった。

「少し行ってきますよ。龍先輩は待っててください」

「あ」

俺は先輩を置いて、人の群れへとタックルしながら入り込む。

そういえば、龍先輩の食べたいパンを聞いてなかった。

まあ、皆が食べそうな物を選べばいいし、気に入らなければ自分で食べればいいんだ。

俺はどんどん奥へ進んでいき、カウンターに辿り着いた時にはほとんどなくなっていた。
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