学園(序)
晴天の下、俺と先輩は屋上に設置されたベンチに座っていた。

「すいません」

「良い。そなたが努力したものじゃ」

俺としたことが微妙なパンを選んだばかりに、龍先輩の気分を害してしまったかもしれない。

『納豆マグロパン』という、禁断の物しか残っていなかった。

生ものをパンに詰めていいのかと思ってしまう。

そろそろ暖かい時期になってきたんだけどな。

「やっぱり、先輩が自分の弁当を食べてくださいよ。俺がそれを食べますから」

「これはワラワのじゃ。そなたにはやらぬ」

さくっと袋を開けて、魅惑の果実にかじりついた。

「ごふ!」

「無理しちゃ駄目だって!これ飲んで!」

俺は食堂で買った飲み物を渡した。

「あ」

「ごふうううううう!!」

飲もうとした緑の液体が空高く舞っている。

お茶を買えばよかったのだが、売り切れていたので渡した物しかなかった。

『ギガ・青汁』という、誰も買いそうにないものだ。

ないよりマシと思っていたが、ないほうがマシだったようだ。

「すいません」

「よ、良い」

そう言って、自分で持ってきた水筒からお茶を出して口直しに飲んでいた。

「俺って、さっきから迷惑かけまくってますね」

誘ったのはいいけど、ろくでもないトラウマばかりを植えつけているようだ。

「今度から、迷惑かけないようにします」

「それは、もうワラワを誘わぬということか?」

「俺、先輩に迷惑ばかりかけてますからね」

今朝だってそうだ。

恥ずかしい思いをさせた続けて、今に至るわけだ。
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