学園(序)
「自分を責めるでない。このようなものは結果に過ぎぬ」

「はあ」

「結果が悪ければ駄目ということもあるやもしれぬ。じゃが、この場合は、結果が悪くても良い。先ほども言うたはずじゃ。そなたは努力をした」

「やる気を出したのは確かですけど」

「それは自分のためか?」

「半分はですね。先輩の弁当を食べられるのならっていう気持ちがありました」

「残りの半分はどうじゃ?」

「やっぱり、先輩のためです。パン、食べたかったって言ってたし」

「うむ、真にその気持ちがあるからこそワラワは嬉しい。そなたの気持ちを駄目とは思えんのじゃ」

「でも、不味いでしょう?」

「少々味に問題はあるが、どうってことはないわ」

もう一かじりするが不味いのは変わらず、涙を流している。

「先輩」

「可愛い人と食べるとおいしくなるとそなたが言うたではないか。ワラワも一緒じゃ」

「味が普通の物ならばって話ですよ。不味いもんは決して」

「良いではないか。世の中にはこのような物も売っているということを初めて知れた。いい経験じゃ」

「はあ、無理だったら言ってくださいよ」

しかし、俺が可愛いって思われてるのか。

男が可愛いといわれて、嬉しがるのもどうかな。

「もう一つ」

「はい?」

「ワラワを誘いたくないというのは本心か?」

「そんなわけないでしょう。こうやって食べてると楽しいのに、誘いたくないなんて、本当は思わないですよ」

「ならば、二度と言うでない。ワラワもそなたとの食事は楽しいのじゃ」

「本当っすか?」

「真じゃ。吟と食べるのも楽しいが、そなたと一緒に食べるのも楽しい」

「そりゃ良かった」

何ら愉快なことはしてないんだけど、喜んでるならいいか。

しかし、家族と食べる食事も楽しいはずなんだろうけど、含まれてなかったな。

そういえば、先輩から家族の話は出てこないぞ。
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